特許権を有する先発医薬品と模倣を主とするジェネリック医薬品は互に対立しているように見える。しかしながら、両者の利益均衡を図ることができれば、医薬品開発のイノベーションを奨励しつつ、より廉価で、多くの患者に医薬品を提供し、社会全体の福祉を促進することができる。それゆえ、「利益均衡」を図ることが、両者の共存を認める制度の趣旨である。医薬品特許リンケージ制度は、ジェネリック医薬品の審査許可と先発医薬品の特許満了期限を「リンク」している。例えば、ギリアド社は中国で「アレナウイルスとコロナウイルスの感染を治療する方法」(出願番号:CN 108348526A)を出願した。特許出願に対して特許が付与されたとしても、中国に関連の先発医薬品が承認され発売されれば、ある一定の要件を満たして第三者がジェネリック医薬品の製造販売を申請する場合には、直接にギリアド社の特許の安全性・有効性情報を使用することができる。例えば、特許明細書[1095]-[1096]段落、「化合物抗ウイルス活性の標準選別案」及び第[1146]-[1158]段落、「実施例46 .静脈内化合物32のマカックにおける中東呼吸器症候群コロナウィルス(mers—cov)に関する二重盲検法、ランダム化、プラボせ対照評価」等。同時に、ジェネリック医薬品の登録申請はすでに発売された先発薬品の特許状況を考慮し、特許権侵害を回避する必要がある。本稿では、医薬品の特許リンケージ制度が、ジェネリック医薬品の市販をスピードアップさせることに対し初歩的な考察を行い、中国、米国、インドの三国の医薬品審査許可と特許制度を簡単に比較してみた。
一、米国の医薬品「特許リンケージ制度」
1984年9月24日に発布された米国の「医薬品価格競争及び特許期間補償法」(Drug Price Competition and Patent Term Restoration Act of 1984、Hatch−Waxman法とも呼ばれている)は、医薬品特許リンケージ制度(Drug Patent Linkage System)を導入した。「リンケージ」制度は、ジェネリック医薬品の市販審査と関連する医薬品の特許有効性審査手続のリンケージを指しており、米国食品医薬局(FDA)と米国特許商標庁(USPTO)の機能のリンケージも含まれる。ジェネリック医薬品と先発医薬品を製造販売する企業は特許リンケージ制度の枠組下で、其々が必要な権利を享受することができる。
(1)ジェネリック医薬品——簡略申請(ANDA)、Bolar免除、180日間の市場独占権
ブランド医薬品(すなわち、先発医薬品、brand name drug)の特許が満了する前に、他の企業は、簡略新薬申請(Abbreviated New drug Application, ANDA)をFDAに提出し、先発医薬品の特許に関連するジェネリック医薬品(generic drug)の市販許可を申請することができる。ジェネリック医薬品を生産する企業は、ANDA簡略申請を行う際に、動物実験と人体臨床試験データを提出する必要がなく、ジェネリック医薬品の有効性と安全性が先発医薬品と一致していることを証明すれば良いので、ジェネリック医薬品の発売までの開発期間、コストを大幅に削減することができる。
また、Hatch−Waxman法に基づくと、先発医薬品の特許保護期間が満了する前に、当局の許可を得るために必要な試験や実験を行うことは、特許侵害に該当しないとされている。試験の実施を認める例外規定は「Bolar免除原則」(Bolar Exemption)と呼ばれる。
ANDA簡略申請を行う際、ジェネリック医薬品の申請者は先発医薬品の特許に関する「声明」を提出する必要がある。声明は、四種類の内容のものがある。その内、先発医薬品をカバーする特許に挑戦する声明は、「第四段声明(パラグラフIV声明)」と呼ばれる(paragraph iv certification)。即ち、先発医薬品をカバーする特許であって、先発医薬品の申請者が申請時に提出した特許は、FDAが「オレンジブック」(「FDA審査許可医薬品製品の治療効果同等性評価」(approved drug products with therapeutic equivalence evaluations、別名「オレンジブック」)に掲載して公表することになっているが、ジェネリック医薬品の申請者が、先発医薬品の当該特許が無効である又は実施できない若しくは先発医薬品製品の特許侵害に該当しないとの声明を行った場合、これを「パラグラフIV」の声明と呼ぶ。FDAの統計によると、約40%のANDA簡略申請が「パラグラフIV声明」を行っている。
最初にANDA簡略申請を行うった企業は下記の要件を満たせば、当該申請が承認された後に、180日間の市場独占権が与えられる。1)、審査者に、「実質的完備した書類」を提出したと認められる。2)、オレンジブックに列記されている特許のうち少なくとも1つの特許に対して「第四段声明」を行う。
(2)先発医薬品——特許挑戦及び抑制期、特許データ保護期及び特許期間延長、擬制権利侵害
FDAにジェネリック医薬品の市販申請(ANDA簡略申請)を提出する際、申請者は次の手続きを行う必要がある。1)ANDA簡略申請において、関連特許が無効である又はジェネリック製品が関連特許を侵害していないことを保証する(パラグラフIV声明)。2)特許権者に簡略申請を提出したことを通知する。
特許権者が、ジェネリック医薬品の申請者がANDA簡略申請を提出した45日以内に特許権侵害訴訟を提起すれば、FDAはジェネリック医薬品の申請承認を自動的に30カ月遅延させる必要がある。その前に、特許期限が満了した又は無効である若しくは特許権侵害に該当しないと判断すれば、遅延する必要がない。この30カ月の遅延期間は、特許権者に与えられた、ジェネリック医薬品の競争者が市場参入を許可される前に、裁判所に特許権の侵害を主張する期間である。FDAの統計によると、このような訴訟は殆ど、双方の和解で終わる。特許権者が訴訟を取り下げることによって、30カ月の遅延期間が解消される。
ジェネリック医薬品を製造販売する企業はANDA簡略申請を行う際に有効性や安全性に関する一致性证明を提出すれば良いが、他方、hatch—waxman法案によると、先発医薬品企業は、新薬の承認を得るために、医薬品管理機関に提出した同薬品の有効性、安全性を証明した一連の実験データのデータ保護独占期間を享受する。例えば、新規化合物(new chemical entity、NCE)が含まれる先発医薬品はFDAの承認日から、原則、5年間,第三者はANDA申請を提出できない(5年の販売独占期間)。この販売独占期間中には、ジェネリック医薬品企業が先発医薬品企業の試験データを使用してANDA簡略申請を提出できないだけではなく、FDAも先発医薬品企業の試験データを参照してジェネリック医薬品を許可することができない。同時に、法案は「特許期間延長」制度(Patent Term Extension, PTE)を定めている——すなわち、特許保護期間を延長することによって、新薬申請に対する開発及びFDAの通常審査の時間は特許を実施できなかったことから、その期間を延長して補填することによって、新薬開発企業のイノベーション成果を充分、保護する制度である。
Hatch−Waxman法は、医薬品特許の有効性を早期に挑戦する訴訟活動を奨励し、公共政策の目的を満たすため、米国特許法は、「擬制権利害権」の概念——研究開発実験の例外規定、つまり「Bolar免除原則」の例外規定を導入した。ANDA簡略申請を提出する際、上記の声明を提出せず、また、先発品の特許期間中に製造販売を意図してANDA簡略申請を提出する行為は特許権侵害、即ち「擬制権利侵害」に見做される。特許法によると、特許権者は権利侵害行為に該当すると主張することができる。その主な救済ルートは禁止令を申請することであり、特許権侵害者の商業活動、ANDA簡略申請審査を制限することができる。
二、インドは医薬品の「特許リンケージ制度」を認めていない
(1)インドの医薬品の特許法律制度の沿革
米国患者はジェネリック医薬品の最初の受益者であるが、インドはその最大の受益者である。インドはジェネリック医薬品の製造大国であり、全世界の20%のジェネリック医薬品を販売している。その価格は先発医薬品の3分の1又はそれ以下であるが、治療効果は先発医薬品とほぼ同じである。インドの医薬品特許法律の変遷を振り返ってみると、国家発展の需要と密接に関連していることが分かる。インドは植民地時代において、1911年に発布された「特許設計法」に基づき、医薬品を含む製品の特許を保護していた。1947年、インドの独立と伴い、インド政府は自国の民族工業、特に製薬業、化学工業の発展状況を踏まえ、知的財産権保護を意図的に「弱化」する方針を採用し、自国の製薬業の発展を保護、促進してきた。1970年、インディラ・ガンディー首相の主導の元、インドの独立後、初の特許法が公布され、食品、医薬品、その他の化学的プロセスによって、製造又は生産された物質(合金、光学ガラス、半導体、金属間化合物を含む)に関する発明は特許を付与しないと規定している。つまり、医薬品の特許を保護ぜず、ジェネリック医薬品の合法化を認めるということである。1970年、特許法が公布された後、インドの医薬品製造企業は、ジェネリック医薬品の研究、生産に力を注ぎ、模倣、開発技術のレベルが絶えず向上し、インドは急速にジェネリック医薬品の製造大国に成長した。
インドは1994年、ウルグアイラウンド交渉に参加し、最終的に、「関税及び貿易に関する一般協定」(GATT)、「知的財産権の貿易関連の側面に関する協定」(TRIPs)に調印。そして、TRIPs第27条の要求に基づき、1970年版特許法を改正した。TRIPsはインドのような途上国に通算10年の過渡期を設けているため、その後、医薬品の物質に特許を付与しない規定は2005年、インドの特許法改正によって、削除された。
インドは発展途上国として、2005年までに特許を付与しないことが認められていた。然しながら、TRIPs協定は、WTO協定発効日(1995年1月1日)に、まだ医薬、農業、化学製品の特許保護を実現していない国は、TRIPs第27条の規定と一致して、協定発効日から、特許申請を受け入れる必要があると規定している。特許有効期限は申請日より起算される。更に、TRIPs第70条は、特許出願の客体を構成する製品について、前述の10年間の猶予期間を設けているものの、当該製品がその加盟国において市場化の承認を受けた後、5年間の「市場独占権(Exclusive Marketing Right)」の過渡期保護を与えると規定している。このような背景下で、インドは2005年に、ようやく医薬品物質への特許付与を再開し、1995年以降に発明された新薬又は既知の治療効果を増強できる医薬品のみに特許保護を提供し、混合原薬や派生医薬品については、特許を認めないとしている。
インドは2009年に、特許法を再び改正し、インドの製薬会社が無許可で多国籍企業の特許医薬品を模倣、製造することを禁止した。
インドは、医薬品産業の発展を促進する目的を達成した後、徐々に特許保護を重視する方向に転換しているが、ジェネリック医薬品の発展のために、余地を残している。例えば、ジェネリック医薬品の輸出許可を強制実施する規定は、ジェネリック医薬品がグローバル市場で販売する土台を整えている。特許の強制許諾とは、医薬品の生産能力が不足している又は生産能力のない国に、インドの特許医薬品を特許権者以外の者が輸出し、関連製品の使用によって、公共の健康問題を解決する制度である。これらの国は許可、通知又はその他の方式によって、インドから特許医薬品の輸入を許可することができる。
米国の医薬品特許リンケージ制度が創設されてから、米国の先発医薬品産業及びジェネリック医薬品産業は、大きく発展し、実践と修正を経て、更に成熟してており、米国が世界最大の薬品市場に成長することに貢献した。
(2)インドは特許リンケージ制度を認めていない
然しながら、インドは、「医薬品特許リンケージ制度」を認めず、「私的権利(特許権)を不適切に公権力(医薬品監督管理部門)に転換している」と指摘している。
2019年8月18日、デリー高等裁判所は、バイエル社とサイプラ社の特許侵害訴訟事件(Bayer Corporation &ors v. Cipla Ltdの紛争事件)で、デリー高等裁判所はバイエルの訴訟請求を却下し、特許主管部門のみが、関連特許が特許性を有するか否かを判断する権限を有し、インドの薬品監督総局(DCGI)によって、裁定すべきではいとした上で、裁判所は医薬品の特許制度を制定することができないので、司法ではなく立法によって、解決する必要があると判定した。それと同時に、特許リンケージ制度がもたらす不利な影響を次の通り、指摘した:
(1)特許主管部門と医薬品主管部門の職責を曖昧化させることになる。
(2)私的財産権としての特許権を、当局の行使する公権力に転換している。
(3)インドがTRIPs合意の下で履行すべき公共健康義務に違反している。
バイエル社は判決を不服としてインドの最高裁判所に上訴したが、2010年12月に上訴請求が棄却された。それによって、医薬品の特許リンケージ制度を否定する司法意見がインド全土の裁判所で確認されるようになった。
インドは先発医薬品への特許保護を弱体化させ、ジェネリック医薬品への規制を緩和する政策を実施している。インドが医薬品の模倣に全力で投入し、医薬品の開発能力が不足し、殆どの「先発医薬品」の特許は米国及びその他の国が有しており、インド自身が「利益の均衡」を重視する必要がないことがその要因である。ジェネリック医薬品で市場を占領し、経済力を蓄積すれば、インドも「模倣」から「イノべーション」に転換していくであろう。そのため、医薬品の特許リンケージ制度がない状況下で、どのように、特許権者の権利保護を図るかは、インドの改善すべき課題である。
三、中国の先発医薬品及びジェネリック医薬品保護制度に関する紹介
(1)中国は国情に応じて特許リンケージ制度を改善している
中国は医薬品特許を保護するために、絶えず法律、法規を改善し、国の状況に適する「医薬品特許リンケージ制度」を確立しつつある。1984年、中国初の「特許法」は、「医薬品と化学方法で取得した物質に特許権を与えない」と規定していたが、1992年の特許法改正によって、同規定が削除された。つまり、2001年のWTO加盟前に、中国は既に、TRIPs第27条の要求する医薬品特許の保護水準を満たしていた。2002年、「特許リンケージ制度」が導入され、試行版「医薬品登録管理弁法」は、他人が中国で特許権を取得した医薬品に対し、ジェネリック品の申請者は当該医薬品の特許期間が満了する2年前に上市登録を申請することができると規定している。つまり「ジェネリック医薬品」の上市の登録申請が可能となっている。2008年、中国は3回目の特許法改正を実施し、米国の「bolar原則」と類似する関連規定を導入した。行政承認(上市登録)に必要な情報を提供するために、特許の対象となっている医薬品、特許医療機器を製造、輸入、使用し又は当該目的のみに供する為に特許の対象となっている医薬品、医療機器を製造、輸入する場合は、特許権侵害に該当しないと規定している。2017年、中共中央庁、国務省庁は「審評承認制度改革を深化し、医薬品、医療機器のイノベーションを奨励する意見」を発布し、医薬品特許に関し、ジェネリック品の審査承認とのリンケージ制度の構築を検討することに触れた。2019年、「知的財産権保護強化に関する意見」は、再び医薬品特許リンケージ、医薬品の特許期間延長制度の構築を検討すると強調した。
中国はインドのような医薬品への特許保護レベルを下げる方法を採用してはいない。中国のジェネリック医薬品を製造する技術、能力は高めていく余地が十分にあるので、医薬品のイノベーション、研究開発を奨励すると同時に、ジェネリック医薬品の製造技術を高める必要がある。米国医薬品市場の発展は特許リンケージ制度が先発医薬品産業とジェネリック医薬品産業を促進する効果があることを証明している。中国は、「医薬品登録管理弁法」等を改正し、特許リンケージ制度の整備を図っているが、特許法にはジェネリックの申請は特許侵害を構成するとの擬制権利侵害等の規則が設けられておらず、具体的な実施原則は関連部門によって、別途制定する必要がある。医薬品産業、特に、先発医薬品産業を発展させるためには、これらの課題を解決する必要がある。
(2)中米(第一段階)経済貿易協議は、中国特許リンケージ制度の整備の促進に言及している
2020年1月15日、米中両国は「中华人民共和国政府とアメリカ合衆国政府の経済貿易協議」を締結した。同協議は、第三節「医薬品に関する知的財産権」の中で、第1.11条「特許紛争早期解決の有效仕組み」、1.12「特許有効期限の延長」等、中国「特許リンケージ制度」を構築、整備する規定が盛り込まれ、米国の制度仕組みを参照し、更に、中国の国の状態に応じて、具体的な規定を設けるとしている。協議によると、中国が制定する予定の「医薬品の特許リンケージ制度」と米国の特許リンケージ制度の比較は下記の通りである:
中国が制定する予定の「特許リンケージ制度」(「経済貿易協議」) | 米国「特許リンケージ制度」(本稿第一段を参照) | |
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1 | 生物薬品を含む医薬品の市販条件として、中国が、最初に安全性と有效性情報を提供した者以外の者が、その前に承認された製品の安全性と有效性に関する証拠(例えば、中国又はその他の国、地区で市販が承認された証拠)又は情報を使用することを認める場合、中国は、(一)特許権者、ライセンシー、又は市販許可所有者に、上記の他者が、承認された製品又は使用方法の適用される特許の有効期間内に当該製品の市販を申請していることを通知する必要がある。 | FDA審査において、ジェネリック申請者は特許権者にANDA簡略申請を提出したことを通知する必要がある。 |
2 | (二)充分な時間と期間を設け、当該特許権者が、権利侵害の対象製品が市販される前に、(三)段で示す救済を提供する。 | 特許権者は、ジェネリック申請者がANDA申請を提出した後、45日内に特許権侵害訴訟を提起する必要がある |
3 | (三)司法又は行政プロセスと即時的救済を規定する。例えば、行為保全措置又はそれに相当する有效な臨時措置を講じ、速やかに承認された医薬品又は使用方法の適用する特許の有效性又は権利侵害に関する紛争を解決する。 | 行政プロセス:特許権者がジェネリック医薬品申請者が簡単申請を提出してから45日内に特許権侵害訴訟を提起した場合、FDAはジェネリック医薬品の上市の為の審査は自ずと、30カ月延長する。即時救済:特許権者は、差止命令を申請し、権利侵害者が米国国内に当該医薬品の商業製造、使用又は販売、或いは米国に輸出することを防止することができる…… |
4 | 特許を付与する過程で、申請者に起因しない不合理な遅延が起きた場合、中国は特許権者の請求によって、特許の有効期間を延長することができる。不合理な遅延は、少なくとも、中国で、特許申請を提出した日より、4年以内又は審査を請求してから3年以内に特許権が付与されていない場合を含む。両者のより長い期間を基準とする。 | (patent term adjustment)米国特許庁での権利化手続等の段階での遅延に対して、特許期間を延長する。 |
5 | 中国で上市を承認された新薬の物質、その製法、用途の特許に対し、特許権者の請求によって、中国は当該特許の有効期間を調整し、当該製品が初めて、中国で上市の為の承認審査の過程で発生した、特許権者の特許有効期間の不合理な短縮を回避することとする。かかる期間の如何なる調整においても、同等の制限と例外条件の下、承認の対象となった製品、用途(適応症)に対応する特許付与の対象となった物質及びその使用方法又は製造方法の全ての特許が調整(延長)の対象となる。中国はこのような調整を最長5年と制限することができる。中国で上市の為の販売承認日より、特許の有効期間は14年を超えてはならない。 | 医薬品の特許期間の延長は最長5年である。尚、上市される日より、最長14年を超えない。医薬品の特許期間の延長を一回、申請することができる。 |
また、ギリアド社が中国で出願した「アレナウイルスとコロナウイルスの感染を治療する方法」(出願番号:CN 108348526A)に対し、第三者がジェネリック医薬品の製造販売を申請する際に、ギリアド社のの安全性・有効性情報を使用することができる。例えば、特許参考書第[1095]-[1096]段落、「化合物抗ウイルス活性の標準選別案」及び第[1146]-[1158]段落、「実施例46 .静脈内化合物32のマカックにおける中東呼吸器症候群コロナウィルス(mers—cov)に関する二重盲検法、ランダム化、プラボせ対照評価」等、化合物32は新コロナウウィルス(2019-nCov)の治療薬のレムデシビルの構造式(説明書第[1088]段)。
「経済貿易協議」における医薬品特許リンケージ制度の構築規定と中国の既に実施しようとしている政策に沿ったものであり、協議書は効力が生じた後の30作業日内に、中国は、行動計画を制定し、知的財産権保護を強化し、経済の高品質の発展を促進することを承諾している。筆者らは中国が医薬品特許リンケージ制度を活用し、重複する作業を回避し、知的財産権を保護すると同時に、ジェネリック医薬品の審査が加速されることを期待している。